介護支援情報Vol.2
| ◆「用心!!用心!! 夏場の水分補給 脱水症状に気をつけて」 |
| 介護に必要な医学知識(脱水症) 脱水の知識をよく知らない人達は、脱水をたかが水分欠乏の事だと思い込んでいる。結論から言うと、典型的な脱水を起こしていると、高齢者は発病して数日で亡くなる。これは非常に怖い病気である。 ところがたかが水だと思っているから、軽く見てしまう。尚悪い事に、人は伝染病だとかガンとか肺炎という病気で死ぬものだと思い込んでいる。「水で死ぬんだよ」と言っても、「えっ?!」と言うだけだ。 ところが、ペストやチフスという」強烈な伝染病細菌でも、100%の人を殺す事は出来ないし、どんなに激烈な伝染病でも、感染して亡くなる人が50%を超えると言う事はほとんど無い。ところが水だけは、100人の人が水を断てば100人全員が死亡する。その証拠に、お坊さんの断食でも水だけは飲む、水分摂取が命につながっているからである。 この脱水症が高齢者にいかに多いかと言う事を本当はもっと知るべきなのに意外に知られていないのが現実で、ここでその基礎医学をしっかり勉強しておきたい。 |
| ◆高齢者が脱水症状を起こしやすい原因 |
| 高齢者が脱水を起こしやすい原因のひとつに、もともと高齢者の体の中には水分が少ないと言う事がある。水が足りなくなったとき、体内に蓄積されていた水を出してくれる組織は、主に筋肉である。若者が水を飲まなくても比較的脱水症を起こしにくいというのは、筋肉から水が余計に出てきてくれるからである。ところが筋肉の少ないお年寄りと赤ちゃんは、水の補給が止まると簡単に脱水症を起こしてしまう。つまり水の予備タンクとなる筋肉が少ないからである。 次に、高齢者は腎機能が低下するために、老廃物を尿として出すときの濃縮力が下がっていて、同じ量の老廃物を捨てるにしても沢山の水分量(尿)が必要になってくる。歳をとると、総尿量が増えてくるのはこのためである。 さらに、感覚機能が低下して、喉の渇きをあまり感じなくなり、水を飲むという意欲もあまり起きてこない。 以上は高齢者の生理的理由であるが、最後に高齢者の生活習慣がある。若い頃からあまり水を飲まなかった人が、一番脱水症を起こしやすいのである。 |
| ◆病気と脱水 |
| 下痢や嘔吐をすると、普段より余計に水分を失ってしまう。「私、昨日から下痢しているのよ」と聞いたならば、すぐさま脱水症かどうか思い浮かべなければならない。嘔吐している人も同じである。 脱水になると熱が出るが、逆に熱が出る事によって脱水を助長している。インフルエンザで熱が出たら脱水になり、脱水になると余計に熱が出ると言う事が重なる。 腎臓病を患っていると、尿の濃縮力が落ちてくるから、尿量は増えて、その反動で脱水症を起こす。 糖尿病でも尿が多くなる。糖尿病の症状の中に多尿症がある。血液の中に余分に存在している糖を、腎臓から排泄しようとするあまり、尿を増やしてその糖を捨てようとするのである。だから老人ホームの健康診断のおり、病名に糖尿病とか慢性腎不全とか腎機能低下とかいう病名を見たら、脱水症になりやすい人だなと、要チェックであるし、もちろん在宅でも同じ事である。 |
| ◆脱水症の症状 |
| 脱水症の症状は、まず全般的な活動性の低下が起こってくる。つまり元気がない。看ると発熱している。ところが発熱は、多くの脱水症では、37℃ぐらい、普段の体温が低い人の場合には、ときには36,5℃ぐらいで、もう発熱ということもありえる。お年寄りというのはだんだん体温が低くなっていくが、このときに普段の観察がものをいうわけである。 次に皮膚が乾燥している。皮膚の乾燥を知るには脇の下を触れてみる。脇の下で脱水かどうかを見分ける技術を身に付けてもらいたい。なんとなく元気が無い様ならば、額に手を当てて「熱を計ろうね」と言いながら、フッと脇の下を触ってみる。お年寄りのベッドサイドで問診する時に、普段でも「どう、元気?」と言って脇の下をちょっと触ってみる。そういう事が別に意識しないでも行動に出てくるのがよい。 脇の下がツルツルっと滑った感じになっていると、「あ、乾いているな」と分かる。水さえ足りていれば、サッとなでると湿り気があるので、ちょっとひっかかるような感じがする。 あとは尿量の減少であるが、これはめったに分からない。普段の尿量が分かっていないと比較できない。ここでも普段の観察が大切である。 時には吐き気を訴える人もいる。 さらに脱水を放っておくと、だんだんうつらうつらし始めて傾眠状態になる。さらに進むと、何か訳のわからないことを言うようになる。うわごとを言ったり、せん妄状態になったり、幻覚が出てきたりする。つまり意識障害ということである。 高齢者が夜間にせん妄を起こすのは、ほとんどが脱水症状によるものである。 あわてて精神科に受診して薬をもらうのはお門違いとなる事が多い。ある老人ホームの経験では、水を与える事で夜間せん妄状態の9割は治った。まずしっかり水分管理をする。それ以上進行すると、昼間もせん妄状態になる事がある。 痴呆の高齢者がせん妄状態になったからといって、あわてて精神科医に駆け込んで精神安定剤か睡眠薬をもらったら、さらにグタッとなり、まったく水を飲まなくなり、脱水症の悪循環を続けるということがよく起こる。 最後は昏睡状態になる。典型的な脱水症は、初日に元気が無くなって微熱が出る。そうした時に脇の下を触れれば乾いている。1日目で気がつけば「お水を飲まなくてはダメよ」と言って水を飲ませると飲む。ところがそれを1日目に見逃して2日目になると、もう水を飲む元気もなくなっている。それで徐々にうわごとを言い始める。そのまま「ちょっとおかしいね」等と言いながら放置しておくと、早ければ4〜5日目に亡くなる例が出てくる。この間も、どれほど水を補給されているかによって様々な経過をたどるが、水を完全に断ち切った状態で経過していくと、数日でだいたい亡くなる事になる。 2日目で脱水を発見しても、本人が水を飲む元気をなくしていれば、点滴以外には補給する方法は無い。在宅ならば診療所に担ぎ込んで点滴をしてもらう。老人ホームならば契約先の医師に点滴をしてもらうわけである。 脱水が原因でも、死亡原因としては「肺炎」という名がつく事が多い。脱水を起こして寝込んだところに、溜まった痰に細菌が感染して結果的に肺炎を起こしたように見える。元を正せば脱水症。脱水症に絶対しないということを守っていただきたいと思う。 |